Quartz Perimorph after Fluorite, Splalerite & Ankerite
Locality: Bounder End Cross Vein, Rampgill Mine, Nenthead,
Alston Moor, Eden, Cumbria, England, UK
Size: 88mm x 63mm x 29mm
Weight: 68g
商品説明:
フローライトを覆っていたドゥルージークォーツに、スファレライトとアンケライトが塗された、イングランド産の珍標本です。フローライトの残した空洞と灰色に煌めくクォーツ、そしてスファレライトを載せて侵略するアンケライトという退廃的なムードも魅力的です。
各鉱物の特徴:
<水晶(クォーツ/Quartz) - SiO₂ / Trigonal - >
肉眼で結晶の形状が確認できる石英のことを水晶といいます。実際には様々な種類や形状がありますが、透明度が高く六角柱状で三角形の錐面を持つのが一般的です。
<蛍石 (フローライト/Fluorite) - CaF₂ / Isometric - >
フッ化カルシウムを主成分とするハロゲン化鉱物で、立方体や八面体、十二面体などに結晶し、花崗岩や熱水鉱脈に石英や方解石、電気石、雲母等を伴って産出します。純粋な蛍石は無色透明ですが、希土類元素の含有により通常は緑や紫、黄色、ピンク色などをしています。微量に取り込まれたイットリウム、イッテルビウム、有機物などにより、紫外線を照射すると蛍光するものもあります。美しい累帯構造が見られることでも人気です。
<閃亜鉛鉱 (スファレライト/Sphalerite) - ZnS / Isometric - >
純粋成分の無色や白から、鉄の含有量の増加と共に、透明薄黄緑色(Cleiophane)、黄褐色、赤褐色(Ruby Blende)、黒色不透明(Marmatite)と色調が変化していく鉱物で、日本でも透明感のある黄褐色〜赤褐色のものはべっ甲亜鉛の名で親しまれています。六方晶系のウルツ鉱(Wurtzite)とは同質異像で、自形結晶が明瞭な場合のみ肉眼でも識別できます。方鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱等と共に、 熱水鉱脈、黒鉱鉱床、接触交代鉱床等に産出し、結晶形態は四面体、八面体、十二面体と多様でスピネル式双晶も多く見られます。方鉛鉱(Galena)や白鉄鉱(Marcasite)等を含む褐色の層状鉱はシャーレンブレンド(Schalenblende)という鉱石名で呼ばれる他、閃亜鉛鉱の二次鉱物としては、菱亜鉛鉱(Smithsonite)、異極鉱(Hemimorphite)、水亜鉛銅鉱(Aurichalcite)などがあり、登場する機会の多い鉱物です。
<アンケル石 (アンケライト/Ankerite) - Ca(Fe²⁺,Mg)(CO₃)₂ / Trigonal ->
茶色、白色、灰色、黄色、黄褐色等の菱面体、針状、板状、放射状集合体等で、火成岩や熱水鉱床、堆積性鉄鉱床の構成鉱物として、水晶(Quartz)、方解石(Calcite)、閃亜鉛鉱(Sphalerite)、蛍石(Fluorite)、黄銅鉱(Chalcopyrite)等と共に産出します。通常は多量のマグネシウムやマンガンを含み、苦灰石(Dolomite)及びクトナホラ石(Kutnohorite)と固溶体を形成します。現在の定義によると、タイプ産地のものも含め、ほとんどの未分析のアンケル石は、実際には鉄に富んだ苦灰石に分類されると考えられるため、純粋なアンケル石は極めて稀となっています。
<仮晶 (スードモーフ/Pseudomorph)>
仮晶(Pseudomorphoses)という用語は、1801年に結晶学の父と呼ばれるフランスの鉱物学者René Just Haüyによって最初に提唱されました。一般的に仮晶とは、元の鉱物の外形を保ったまま、結晶が化学的または構造的に変化し、他の鉱物へと一部や全体が置き換わったものを指します。具体的にどこまで仮晶に含めるのか、またその分類法については、学者間でも見解が分かれるため、未だに明確な定義が確立されていません。一鉱物標本店としては、過去の研究を参考に、大まかに下記の5種に分類します。
�� Paramorph (Allomorph)
同質異像(Polymorphism)の性質を伴う多形(Polymorph)鉱物による多形仮晶(Paramorph/Allomorph)です。低温水晶(alpha quartz)と高温水晶(beta quartz)に代表されるエナンチオトロピーな相転移を示すEnantiotropic種と、石墨(Graphite)とダイアモンド(Diamond)や水晶(Quartz)とコーサイト(Coesite)、鱗珪石(Tridymite)等に代表される非可逆的なモノトロピー(単変)のMonotropic種に大別できます。多形が2種の結晶形を取るならばDimorph、(TiO2)の多形である金紅石(Rutile)、鋭錐石(Anatase), 板チタン石(Brookite)や、(Al2SiO5)の藍晶石(Kyanite)、珪線石(Sillimanite), 紅柱石(Andalusite)等、3つならばTrimorphと呼ばれます。
�� Metamict
メタミクト鉱物は、内包または近接するウランやトリウムによるアルファ粒子という放射線によって、結晶構造が損傷を受け非晶質化させられたものです。メタミクト化されると屈折率や比重、硬度といった様々な特性が低下します。ジルコン(Zircon)や、サマルスキー石(Samarskite)、フェルグソン石(Fergusonite)、ユークセン石(Euxenite)等がこれに該当します。
�� Exsolution (Entmischung-Pseudomorphosen)
離溶や固溶体分離とも呼ばれる現象で、高温下で生成された固溶体鉱物が、ゆっくりと冷却されることで他の鉱物に分離したものです。チタン鉄鉱(Ilmenite)が金紅石(Rutile)と磁鉄鉱(Magnetite)や赤鉄鉱(Hematite)に分離した標本が有名です。
�� Alteration
成分の獲得や喪失、交換といった化学反応により、鉱物が部分的または完全に置き換わったものです。分類法の見解が多岐にわたることもあり、SubstitutionやInfiltration、Replacement、Alteration等の呼称と定義が混同し煩雑化しているようです。成因によって、a. 成分の喪失(e.g., Copper after Cuprite or Azurite)、b. 成分の獲得(e.g., Malachite after Cuprite、Gypsum after Pyromorphite)、c. 部分的置換(e.g., Goethite after Pyrite, Galena after Pyromorphite)、d. 完全置換(e.g., Quartz after Calcit, Barite, or Fluorite)と大別されます。
�� Encrustation (Perimorph/ Epimorph)
他の鉱物に覆われた鉱物が、後に消失したことによって生成された仮晶です。そのうちPerimorph(Epimorph)は空洞の殻が元の鉱物の輪郭の形で残ったもので、Encrustation PseudomorphやUmhüllungspseudomorphosenとも呼ばれます。また、このプロセスを鋳造に見立てて、残った鋳型の部分をMold、その中に侵入して生成された鋳物に該当する鉱物をCastと呼ぶこともあります。ポリへドロイド(Polyhedroid)は、長石(Feldspar)や方解石(Calcite)の仮晶と考えられてきましたが、実際はランダムな角度で交差する方解石の薄板の隙間を埋めたシリカであり、Castに分類されます。さすがに抵抗がありますが、スイスの鉱物学者は、鉱物の表面に残された、消失した他の鉱物の痕跡のことを、ドイツ語で傷を意味するNarbenという用語で呼ぶ慣習があり、これを当カテゴリーの仮晶に分類する説もあります。
鉱物標本上に限らず、広義の仮晶は目立たない形であまねく存在していますが、一般に鉱物標本店では、��Alterationと��Encrustationを中心に仮晶鉱物として取り扱う傾向があるようです。
▲▼ こちら側はフローライトの窪み以外はほぼアンケライトとスファレライトで覆われており、荒廃して錆びれた岩場のような殺風景な景観となっています。
▲▼ 灰色に煌めくドゥルージークォーツの形状に、フローライトの群晶の名残のあるのがわかります。何故かやたらに躍動感のあるスファレライトも印象的です。
▲▼ キュービックフローライトのあった部分が、人工的に綺麗にえぐられているかのようです。
▲▼ スファレライトもアンケライトも、まるでじわじわと動きながらクォーツ上を侵略しようとしているかのようです。
▲▼ 底面側です。フローライトの型の存在感が凄いです。元のフローライトの群晶を象って段々畑のような形状になっていますが、上方向にはほぼアンケライトが載っていないのも興味深いです。